アピストグラマをもっと知りたい。気付いたら嵌っていたドワーフシクリッドの飼育記録を綴ったブログです。

2020年8月27日木曜日

AW Story 男の隠れ家

AW Story 男の隠れ家
帝国軍が建造中の新エロモ・スターに対抗すべく、秘密兵器"なんちゃってブラックウォーター"を手にして意気盛んな反乱同盟軍であったが前回の戦闘によるダメージは予想外に大きく軍の体制を整えることが最大の急務であった。
来るべく新エロモ・スター戦に備えて反乱同盟軍は、バクテリアの使い手である未来のヘンダイを養成するため全エリアでパタワンの募集と訓練を実施していたのであった。

"北欧エリア" CIKLID BLADET

Ciklid bladet
北欧シクリッド協会が発刊している"CIKLID BLADET"
2017年からアピストの写真を提供しているが、毎回私の撮影したアピスト写真を掲載していただいており既にシリーズ化している。
その割に新たなパタワンが増えた、という実感はない。。。
が、ノルウェーにはグランドマスターのTomCが居るので今後は北欧から多くのヘンダイが誕生してくるはずである。

"西欧エリア" Aquarium Wereld

Aquarium Wereld
ベルギーで発刊されているアクアリウム雑誌"aquarium wereld"
"wereld"はオランダ語で、英語にすると"World"になるようだ。

Aquarium Wereld
現地のマスターから、昨年学名が付いたプサモフィラについて特集を組みたいとの要請を受けて画像を提供した。

Aquarium Wereld
これによりこのベネルクスエリアからも今後続々とパタワンが誕生してくることだろう。

"東亜エリア" 男の・・・

東アジア、特に日本エリアの対応をおざなりにすることは決してない。

男の隠れ家 2020年10月号
今回、反乱同盟軍の秘密基地"ダコタナ"がとある雑誌に紹介された。
多くの情報を伝えたはずなのにかなりの部分が端折られているようだ。しかもスペースの問題だと思うが無理やり言葉を短くしているので意味不明に解釈されてしまう可能性がありそうでとても残念だ。
しかし今回は仕方ない・・・。

男の隠れ家 2020年10月号
何故ならアクア雑誌ではなく一般誌だから。
"男の隠れ家 2020年10月号"は本日 8月27日発売!
本号は「男の趣味部屋 ギア&コレクション」と銘打って、レトログッズ、プラモデル、カメラ、フィギュア、レコード、楽器、フィッシングギア、模型、標本、等々各カテの所謂ヘンダイの方々が自慢の趣味部屋を披露している特別号。
何となく場違いな気もしたが、アクアリウムカテでの取材要請があったので我が秘密基地"ダコタナ"を紹介いただいた。
読者層は様々な意味で余裕のある方々だと思うので、一度ハマってしまえばヘンダイに上り詰める確率は高いはず!
明日から多くのパタワンが誕生することを祈る。
"男の隠れ家 2020年10月号"は全国の書店、コンビニ(?)、ネット書店にて!

バクテリアと共にあらんことを!

この記事の一部はフィクションです。表現方法、登場する人物・団体・名称等は架空であり実在のものとは関係ありません。
そしてこれを書いた人のキャラもフィクションです。
掲載内容については、私の知識や経験を基に書いているため必ずしも正しいとは限りません。


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2020年7月12日日曜日

AW Story ブラックウォーターの夜明け

AW Story ブラックウォーターの夜明け
究極兵器エロモ・スターを反乱同盟軍に破壊された帝国軍であったが、更に強大な新エロモ・スターを建造中との事実が"フルクラム"を通じて情報提供された。
謎の情報提供者フルクラムが一体誰なのかは極一部の幹部にしか知らされていなかった。
そんな時、フルクラムから帝国軍の新兵器に対抗し得る新たな兵器を開発した、と連絡が入ったためフルクラムの本拠地がある惑星チリに向かった。そこで待っていたのは、かつて心ならずもヘンダイ聖堂を去るしかなかった元パタワンのアソッカ・タノであった。
アソッカはフルクラムという偽名を使い反乱同盟軍を陰で支えていたのだった。そしてアソッカが長い時間を掛け苦労して開発した新兵器が・・・。

秘密兵器"なんちゃってブラックウォーター"

AW Story ブラックウォーターの夜明け
アソッカはこれまで何年もかけてアピストの色揚げについて研究してきたようだ。特にアピストの赤色というのは飼育期間が長くなるにつれ色褪せていってしまう・・・。それを阻止するために餌の種類、水質、水草水槽での飼育、紫外線、底床の砂、舞台用照明フィルター・・・等々、考えられる方法を試行錯誤してきた。
しかしどの方法も〇〇だから△△である、という決定的な結論を見出せずにいたのだった。
最後の手段として、赤褐色のブラックウォーターでの飼育というのは常に考えていたそうだ。体色に赤色を持つアピストの生息地はほぼブラックウォーターで、それが捕食者から身を守る保護色と考えれば単純明快で実に論理的だ。
しかしブラックウォーターのデメリットとして綺麗な写真が撮れないのが一番のネックだったらしい。これは唯一のデメリットであるが、写真好きとしてはかなりの大問題である。

AW Story ブラックウォーターの夜明け
そこで開発されたのが"なんちゃってブラックウォーター"のLUBLA(ルブラ)だそうだ。
見事なまでに水槽内全体を赤褐色に染め上げている。

ルブラを10日間使ってみた

Apistogramma cf. alacrina
Apistogramma cf. alacrina
彼らの生息地はそれほど濃いブラックウォーターではないはずだが、導入から1年以上が経過して徐々に頬の赤色が薄くなってきていた。
あまり期待していなかったが一週間経って蓋を外したら赤色が復活してました!

Apistogramma sp. D56
Apistogramma sp. D56
上のアラクリナ同様何となく頬の赤色が褪せ始めてきたので試してみたら体全体の赤色が鮮明になってきた感じを受けます。

Apistogramma sp. aff. gibbiceps / A. sp. Maravilha
Apistogramma sp. aff. gibbiceps / A. sp. Maravilha
珍しいブラジルからの新種。しかもこのような時期に。
ブラジルは他国よりも熱帯雨林を流れる川の流域面積が絶対的に大きいので探したらアピストの新種がもっと見つかる筈。だけどインディオと仲良くなってインディオ保護区で採集させてもらえるような研究熱心な方がいないのが非常に残念。
導入当初は黄色が強いアピストだと思っていましたが、顔周りは各鰭先と同じようなオレンジが滲み出てきました。継続していったら赤に変化するかもっ!(笑)

Apistogramma cf. viejita
Apistogramma cf. viejita
珍しく目の後方にも赤点があるヴィエジタでしたが時間の経過とともにそれらの赤色が濃くなってきました。こちらも継続していったらどうなるのか興味津々。

元々赤の色素を持っていないアピストには効果は期待できないと思いますが、ブラックウォーターの住人であれば本来保護色としての赤色の色素を持っているはずなので色揚げが期待できると思います。ただし褪色してから長時間経過してしまっている場合は難しいかもしれません。
それと、我が家は全く稚魚育成をしていないので試せませんが、産まれてきた稚魚の色揚げにも大きな効果を多分期待できると思います。
もちろん与える餌や水質などにも影響されるものと思われるので、色揚げの一つの方法として捉え、他の方法と併せて総合的にアプローチしていくのが得策だと感じます。
デメリットとしては、観賞的にちょっと・・・という問題はあります。1~2週間で効果が表れるのであれば定期的に蓋をローテーションすれば良いかな、と思います。
いずれにしてもまだまだ検証途中という状況なので、今後も検証を続けて効果を見極めていこうと思っています。

何だか途中から普通の話し方になってしまったけど・・・

バクテリアと共にあらんことを!


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2020年4月12日日曜日

AW EP-V 暗黒面のコントロール

 遠い昔、はるかかなたの銀河系で・・・ 
つい最近、手を伸ばせば届く小さな水槽で・・・
AQUA WARS episode5 暗黒面のコントロール
休息が必要だった。絶体絶命の窮地に立たされるも帝国軍が誇る究極兵器エロモ・スターを破壊した反乱同盟軍。手に汗握る展開と劇的な勝利に沸いた反乱軍であったがそれに伴うダメージも甚大であった。
被害の修復作業と艦隊の英気を養うため反乱軍はコロンビア南東部ミトゥイーンにある秘密基地に集結した。ルーク・スカイウォーター率いる自由の戦士たちは久しぶりに穏やかな時の流れを感じていた。





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秘密基地ミトゥイーン

南米地図
ミトゥイーンはほぼ赤道直下に位置する。気候は一年を通して安定しており、雨季と乾季が繰り返されるが日本の四季のような大きな気候の変化はない。また緯度が低いため日の出・日の入り時間も一定していて昼と夜の時間が一年を通してほぼ同じ12時間である。

アピストグラマの生息地は、ブラジル・コロンビア・ペルー・ベネズエラ・エクアドル・ボリビア等広範囲に及ぶが、いずれの生息地もほぼ赤道直下に位置しており同じような気候に生息している。

ライトサイドとダークサイド
AWにおける"ダークサイドに堕ちる"とは『妬み嫉みの思いが次第に怒りに変わりその感情に支配されてしまうこと』を意味するが、ここではアクアリウムにおけるライトサイド(光明面)とダークサイド(暗黒面)について考える。つまり照明のONとOFFである。

生息地での昼の陽ざしの強さは言うまでもないだろう。
夜は多少の月明りがあるが熱帯雨林に囲まれた小川の水中にまで届く光はほぼ無い。更にアピストなど小型の魚は頭上に障害物がある場所を好むので彼らに見える物は漆黒の闇だけだ。
日没から夜明けまでの少なくとも10時間はこのような真っ暗な環境で動かずに時間を過ごしている。その間連続で睡眠しているわけではなく、周りを警戒しながら寝たり起きたりの短い睡眠を繰り返しているようだ。

このように生息地では規則正しいメリハリのある明と暗が繰り返されているが、飼育環境での明と暗はどうだろうか?
ほとんどがアクアリウム用の照明機器を使用し、中にはタイマー管理して規則正しく明と暗を再現しているヘンダイやパタワンが多いのではないだろうか。飼育環境下での照明の点灯時間は、コケの繁殖防止なども考慮して6~9時間程度が良いだろう。それ以外の時間帯は真っ暗な環境にするのがベストだ。

光と体内リズム
光は生物が生きていく上で必要不可欠な要素である(特殊な環境に生息する一部の生体を除く)。変わることない24時間という周期に体内リズムを同調させていて、光がそのリズムに大きな影響を与えているからだ。
アクアリウム用の照明というと最近はLEDライトが主流になりつつある。水草育成に特化したライトや、色温度を変化させることにより太陽光に似せたり生体の色を鮮明に見せたりとその種類は様々だ。
アピストの綺麗な体色を楽しむには蛍光灯の光が一番馴染む感はあるが、アピスト自身は光の強さや色温度を気にしたりストレスを感じている様子は窺えない。
Apistogramma sp. D56

寝る子は育つ
睡眠はあらゆる生物にとって重要だ。
レム睡眠中に夢を見ながら脳では記憶の整理をしている。とある研究によると魚類もレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しているようだ。夢を見ているのかどうかは定かではないが。
また睡眠は成長に関しても重要なファクターとなる。明るい時間帯は摂食して体内に栄養を蓄え、睡眠中に成長ホルモンを分泌させて成長する。
水草も同様に明るい時間帯は光合成により栄養を蓄えて夜間に生長する。水草水槽を管理しているなら朝になって水草の急激な生長に驚いたなんて経験が何度かあるはずだ。

明かりはストレスになり得る
アピストが照明に関してストレスを感じてるとしたら、照明が点灯している時間よりも消灯している時間だろう。
もし現在管理している飼育環境にて生息地と同じような漆黒の闇を12時間以上与えられていなかったり、点灯・消灯時間が不規則ならばアピストにストレスを与えて次のような悪影響を及ぼしている可能性がある。
充分な睡眠をとれず消化や成長に支障をきたしている。
体内リズムが狂いホルモンの分泌に支障をきたしている。
成長ホルモンや睡眠ホルモン(メラトニン)など。
本来の綺麗な体色ではなく何となくくすんだ体色になっている。
①②にも関連するが、常に光を感じているので発色機能に支障をきたしている可能性がある。
DVを受けている場合それに対抗する体力の回復が見込めない。
魚眼レンズと言われるように集光能力に長ける魚類の視力は思いのほか良い。消灯時であっても極僅かな光を頼りに相手の居場所を特定してDVを繰り返している可能性が高い。
水草が徒長したり縦伸びする。
僅かな光を求めて上へ上へと伸び、這わせたい下草が縦伸びしてしまう。
微かな光でも生長するコケがガラス面に蔓延る。

特に気を付けたいのは④だ。小さな水槽内では例えペアであったとしても縄張り争いが絶えないのがシクリッド。
例えば・・・
ある弱者は照明点灯時には強者から身を隠し目の前に流れてきたブラインシュリンプのみを摂食して食い繋いでいる。消灯時は狭いスポンジ裏ではなくせめて床がある落ち着いた場所でゆっくり休みたいのに、薄明かりのせいで消灯時も身の安全を考え強者の存在を常に意識しなければならない。結果として、睡眠時間はなく体力の回復もままならずストレスが溜まりに溜まっていく。
一方の強者も消灯時なのに薄明かりのせいでチョットした相手の動きが気になって攻撃を続けてしまう。結果として、強者も寝不足に陥る。
といったケースが考えられるのだ。
Apistogramma sp. D56

漆黒の闇をつくる
アクアリウム用の照明と言えば点灯時の光の強弱や色温度などに着目しがちであるが、点灯時よりも消灯時の環境づくりの方が重要だということがお判りいただけるはずだ。
避難場所の隠れ家をいくつも用意しても気に入って使う隠れ家はせいぜい1個か2個である。消灯後にそのお気に入りの隠れ家でゆっくり休ませるためにも漆黒の闇の時間を充分確保してあげるべきだろう。

このような環境づくりに一番適しているのは専用の水槽部屋を確保し、外光が入らないように雨戸を絞めたり徹底的に窓の目隠しをすることだ。
しかし相当年期の入ったヘンダイでも水槽部屋まで用意するのは物理的に難しいことが多い。このような場合は黒いプラダンなどを用意して水槽丸ごと囲ってしまったり、APAP台の窓枠の大きさに合わせてカットしたプラダンで遮光するなど工夫してほしい。
仕事等の関係で夜間のみ照明を点灯するヘンダイやパタワンが多いことだろう。この場合昼間の遮光には充分気を遣う必要がある。

例外的に使う常夜灯
「折角産卵したのに一夜明けたら卵が無くなっていた」とか「浮上間近だったのに稚魚が突然居なくなった」というのは多くのヘンダイが経験しているはずだ。
この理由についてはハッキリ分からないが、照明の点灯や消灯のタイミングで親魚がパニックに陥って食卵や食仔に至ってしまう事もあるようだ。
このように食卵を繰り返すペアの場合、産卵から浮上するまでの約一週間、消灯時にもその水槽だけに小さな常夜灯を設置すると食卵を防止できることがある。消灯時も水槽に光を当てて卵を守っているメスが深い睡眠に入らず集中させ続けるのがその目的だ。
食卵を続けるペアにはこの方法を一度試してみても良いだろう。

紫外線の効果
人類には認識できない紫外線だが魚類にとっては可視光線だ。
この紫外線による体色の変化だったり、紫外線を同じ種族や雌雄の識別に利用しているのでは?と個人的に追求したことがあったが結論は出なかった。
しかしある有名な学者が魚類の紫外線の利用方法について研究しており、間もなく研究結果が出ようとしている。その内容には紫外線を使ったアピストの雌雄識別についても含まれているようなので発表が待ち遠しい。
Apistogramma sp. D58

探査ドロイド
その頃ミトゥイーンの秘密基地に重大な危機が迫っていた。
若きヘンダイ、ルーク・スカイウォーターを捜すことに執念を燃やす帝国軍が無数の探査ドロイドを全域にくまなく放ち、そのうちの一機がミトゥイーンの秘密基地を見つけたのだ。
こうして反乱軍の束の間の休息は終わりを告げたのだった。
Apistogramma sp. D58

バクテリアと共にあらんことを!


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2020年4月1日水曜日

AW EP-IV 見えざる偉大なもの (後編)

AW EP-IV 見えざる偉大なもの (前編)からの続き
AQUA WARS episode4 見えざる偉大なもの

観察の目的

アピストは基本的に強い魚であるが鰓(えら)にトラブルを抱えやすい。
魚類は鰓に張り巡らされている毛細血管から溶存酸素を取り込み、同時に二酸化炭素を水中に排出している。この鰓にトラブルを抱える原因として考えられるのはやはり水質の悪化だろう。
水質を維持するのはバクテリアの役目なので、飼育者はバクテリアの働きを常に観察する必要がある。しかしここで疑問が湧く。バクテリアは見たくても目に見えない、ということだ。

バクテリアを視覚でとらえることは修行を積んだマスターヘンダイであっても残念ながら不可能である。ならばどのようにバクテリアを観察するのか・・・。それはバクテリアを見るのではなく感じるのだ。
水槽毎に異なるバクテリアのコンディションを、計測した数値・アピストの行動の変化・水の色・水面の泡立ち・匂い・藻類の種類と生長度合い等から総合的に判断して推測する。
その推測した結果を過去の推測値と比較して未来のコンディションを予測する。所謂”点と点を結んで線にする”という方法だ。

水槽を立ち上げてしばらくしたら硝酸が発生したので濾過バクテリアが立ち上がったと安心してしまいバクテリアのことを意識しなくなるパタワンが居るが、バクテリアが立ち上がってからも、バクテリアが充分に熟成してからもバクテリアを意識し観察し続けることが重要である。

アピスト自体をよく観察することも重要だが、もしアピスト自体に何か悪い症状が出ている場合はその時点で既に手遅れの場合が多い。そうならないためにもアピストの行動の変化を観察して、その先に存在するバクテリアの状況を把握してほしい。

従って観察の目的とは、現状のバクテリアのコンディションを把握し、未来のコンディションを予測し、バクテリアやアピストに悪影響が及ぶ場合は事前に対処することである。

目的ある換水

図1 生物濾過サイクルを表した略図

換水の目的は様々ある。いずれにせよ換水により水槽の環境が現在よりも良くなるなら是非実施するべきだ。しかし必要のない換水はバクテリアを含む水槽内の生体にとってストレスになりかねない。

◎ 例として、以下のような場合は換水した方が良いケース。
  • しばらく換水してなかったので硝酸を計測したらヤバい数値が出てしまった。
  • 立ち上げ直後の水槽は濾過バクテリアのバランスが悪いため有害物質が水槽内に残りやすい。そのため飼育者が換水によりバクテリアの働きをサポートする。
  • 昨日誤って餌を大量に与えてしまった。バクテリアは立ち上がっているはずだが亜硝酸→硝酸を担っているニトロスピラ属の働きがちょっと不安なので、念のため明日悪影響が出る前に今日1/4換水しておこう。
    大量の餌を与えた2~3日後にアピストが動かずジっとしている姿を見ることは多いはず。これはバクテリアの働きが充分でなかったために水質が悪くなっているのが原因だ。どうして2~3日後にアピストに悪影響が出たのかについては上の図の各バクテリアの倍加時間を分解時間と捉えて見ていただくと分かると思う。
  • バクテリアの状態を含め水槽の様々を観察をしたところ、換水した方が良いと感じた。
    長い間同じ水槽の観察を続けると数値よりもこの感覚の方が信頼できる場合が多い。
  • 水草水槽を立ち上げたが、水草の根がまだ張ってないしバクテリアも全く立ち上がっていないので1~2週間は毎日3/4換水するゾ。
◎ 逆に本当に換水する必要ある?と疑問を感じるケース。
  • 毎週○曜日は換水の日と決めて定期的に換水を実行している場合。
    飼育者各自の生活リズムがあるので実際にはそうなってしまうかもしれない。その場合は実施しない週をつくったり換水水量を一定量ではなく水槽の状態に合わせて調整しても良いと思う。
  • 立ち上げてから1ヶ月程度経過しバクテリアが安定期に向かっている時に大量換水をしてしまう場合。
  • 他の水槽を換水したついでにこっちもという場合、等々。
換水の目的は、現状よりも良い状況にするため、または近い将来発生するであろう悪影響に対し先手を打つために行う行為である。
しかし換水を行うことにより水槽の水質は少なからず変化する。その変化が良い方向に向かうのであれば換水すべきであるが、もしその逆の場合はアピストやバクテリアにストレスを与えてしまうことを理解すべきだ。
換水という作業自体は単純であるが、そのタイミングの判断はアクアリウムという趣味の中では比較的難しい部類に入るのではないか。経験を積んだヘンダイならば換水後にアピストが調子を崩してしまったという経験を何度も味わっていることだろう。

水槽立ち上げ当初は換水頻度は高くなりがちだが、濾過バクテリアの熟成が進むにつれ換水の回数または水量は本来であればだんだんと少なくなるはずだ。もしそうでなければ、濾過バクテリアの存在を全く意識していないか、換水が趣味で換水が大好きということだろう。

水草水槽にも同じことが言える。
水草水槽の多くの場合は、水草の他に流木やソイルなどバクテリアが好む有機物が多いので各種様々なバクテリアが棲んでいるはずだ。当然立ち上げ当初は換水頻度は高くなるが、バクテリアの数が整いバランスが取れてくる頃には水草の調子も上がり硝酸等の吸収が進むようになる。この状態が続くと水草水槽もようやく安定期に入り、それまでのような頻繁な換水作業は不要になる。しかしこのような安定期に入っても頻繁に換水を続けてしまうと、水草が機嫌を損ね、萎縮や縮れなどを伴い生長を止めてしまうことがあるので注意してほしい。
アピストの中には換水が苦手な種が存在する。
知ってる限りあげてみると、sp.クイアリ、sp.D37(キーメンフレック)、sp.D39(アルトヴァウペス I)、エレウテリア、sp.D52、sp.D56。
これらの種の共通部分が分かるだろうか。生息地が源流に近くかつ単一河川であることだ。このような生息地の場合、雨季等で水が増水したとしても水質の変化が少ないはずだ。なので水質の変化に対応する術がDNAに刻み込まれていない、と推測する。生息地が同じような環境で水質の変化に弱い種は他にもきっと居るだろう。
逆に下流に行けばいくほど支流が増えてくるので複数の水質が混ざってくるはず。よって複数の支流が混ざり合う下流に生息しているアピストは長い時間を掛けて水質の変化に対応できるようになったのだろう。
ネグロ川に生息するアピストは”安定した水質で飼育することが重要”と言われることがあるが上記のようなことが関連しているとは考えられないだろうか。
ソイルを使って水草水槽を立ち上げた場合、1~2週間は集中換水するのはよくあることだと思う。それはまだバクテリアが完全に機能していないし、水草がまだ根を張っていない。バクテリアが少ないので魚の排泄物や流木などから発生する物質やアンモニアに対処できない。それとソイルから溶け出す余計な栄養分を吸い出してあげるのがその目的だろう。
しかしこの時にフィルターを回してないだろうか?
折角不要な物を苦労して外に排出しているのにフィルターを回していたら濾材やウールパッドにそれらがくっ付いてしまう。これによって立ち上げ初期の藻類に苦労している可能性がとても高いと思う。
集中換水の期間のフィルターは他の水槽やバケツで回しておき、本水槽では水中モーター等を使いCO2を拡散しておけば問題なし。きっとこれだけで初期のコケまみれ状態は回避できるはずだ。
Apistogramma cf. flabellicauda

濾過面積

濾過面積は生体数や餌の量、それと水量とのバランスをとる必要がある。バクテリアの数は餌の量に比例するからだ。アピストを飼育するのであれば、一般的に30リットルの水量に対してシングルスポンジフィルター1本で充分だ。

もし30リットルに対して生体を30匹ほど飼育する場合は餌の量も多くなるのでバクテリアもそれに見合う数が必要になる。この場合バクテリアの仕事量が増大するので換水頻度も多くなるはずだ。
逆に30リットルに対して生体が2匹の場合は与える餌の量も少なくなるはずなのでバクテリアの数も少なく換水頻度も少ない。この水槽の生体数が急に多くなった場合は注意すべきだろう。
30リットルに対してシングルスポンジフィルター1本、アピスト以外の生体を含めて10匹程度がバランスよく管理し易いだろう。

ただしバクテリアがコロニーを作る場所はフィルターのみとは限らない。水槽内の至る所にコロニーを作ろうとするはずだ。気を付けなければならない場所が底床である。
底床は残り餌やコケが溜まりやすく、このような場所にバクテリアはコロニーを作る。底床が厚い場合も同じだ。
バクテリアが増えることは良いと思われがちだが、フィルター以外の場所にバクテリアが定着してしまった場合には急激なバクテリアの増減に注意する必要がある。何らかの原因でコロニーが無くなってしまった場合にバクテリアのバランスが大きく変化してしまうからだ。例えば換水時、底床のゴミを吸い取った時にバクテリアも一緒に捨ててしまう可能性が高いのだ。

時々換水時に底床のゴミを巻き上げたのが原因でエロモナスになってしまった、と聞くがこれも底床に溜まったゴミが原因だ。しかし勘違いしていると思う部分がある。エロモナス菌は常駐菌であることは知られている。常駐菌ということは水槽の至る所に居るし、当然魚の体表や体内にも存在している。
底床のゴミを巻き上げたことによりそこに静かに潜んでいたエロモナス菌が活性化してアピストにくっ付き病気になったと思うかもしれない。確かにその可能性もあるが、底床を巻き上げバクテリアのコロニーを破壊してしまいバクテリアのバランスが崩れ、その結果アピストの免疫力が落ち数日後に体内に潜んでいたエロモナス菌が暴走した、というのが正しい捉え方だろう。
人間でもストレス等により免疫力が低くなった時にいつもは悪さをしない腸内細菌が暴れ出してお腹が痛くなる、なんてことがあると思うがそれと同様の現象が水槽内で起きたと思われる。

中大型魚をベアタンク水槽で飼育しているのをよく見ると思うが、排泄物を掃除しやすくする目的があると思うが、底床にバクテリアのコロニーを作らせないという目的もあるのではないかと推測する。アピストの場合ベアタンクで飼育すると体色が飛んでしまうのでオススメはしない。

以上のことからアピストを飼育する場合、底床は砂等を極々薄く敷き、底床はいつも綺麗にしておきべきだろう。そしてバクテリアの定着場所をフィルターのみに集中させることでバクテリアのコンディションを把握・管理しやすくなるはずだ。
生まれた稚魚等多くの生体を飼育する場合は餌の量が多くなるので多くの水量とバクテリアが必要になる。こんな時はフィルターに何を選べば良いか迷うところだと思う。
その後も生体の数が増える可能性があるなら個人的には60cm水槽で底面フィルターをオススメする。底面全体が濾材なので急な生体の増減にも対処でき、水槽内に淀んだ場所が出来にくいからだ。硬質のソイルを使えば長期間維持することができる。
欠点は、濾過面積が大きいのでバクテリアの立ち上がりがかなり遅いことだ(完全に安定するまで約1年掛かる)。しかし良いバクテリアが定着しているスポンジをスライスしてスノコの下に潜り込ませておけば立ち上がりのスピードを加速させることができるはずだ。もし今後稚魚が増える予定がある場合は早めに環境を用意しておいた方が良いだろう。
スポンジを細かくカットして優秀なバクテリアを移行する方法は外部フィルターなど他のフィルターにも応用できる。バクテリアを早く効率的に移行する方法として是非マスターしてほしい。

この時代だからこそアナログ

「アクアリウムという趣味は今のデジタル時代とは真逆にある世界。超アナログで人間の優しい心を取り戻すことができる世界だ」
と話すのは、音羽のヘンダイ聖堂を取り仕切るグランド・マスターのマスターシトーである。
その通りだと思う。全てに対して常に正確性とスピードが求められ、昔と比べネットやその他様々なインフラが整いとても便利になる一方で、人間らしい研ぎ澄まされた感覚みたいな物が忘れ去られるのではないかと不安になることもある。数字では決して表すことができない未知の世界がまだまだ沢山あるはずだ。だからこそアクアリウムという超アナログな世界で人間らしい心や癒しの心を楽しみ、そしてパタワンの皆にはヘンダイの真髄を極めていってほしい。

池袋のヘンダイ聖堂は同じくグランド・マスターのマスターソルトが取り仕切っている。
この聖堂には『魔法の水』と呼ばれるアピストの体色があっと言う間に揚がってしまう不思議な水槽が置かれている。しかし一見何の変哲もない普通の水草水槽だ。
この水槽の秘密を探求し、その鍵は水草だと結論付けて水草の種類による変化を試す者も現れた。
しかしその答えはとても単純であった。毎日水槽を観察し、足りないものを与え要らないものを除き長い間維持管理してきただけの水槽なのだ。立ち上げから恐らく3年以上は経過していると思われるその水槽のソイルはそれ自体の栄養分はとっくに無くなってしまっている状態だ。それでも水草と魚とバクテリアの状態を常に観察して最高の状態に保ち続けているのがグランド・マスターたる所以なのだ。

丹精込めて育て上げられたバクテリア群は目で捉える事はできないがその環境に最も適した唯一無二の存在である。言葉を変えれば貴重な財産である。そしてもちろんそれはプライスレスだ。
数字だけに頼ることなく、自らが育てたバクテリアと自らの感性を信じて磨くことがヘンダイへの第一歩なのである。
Apistogramma cf. flabellicauda

絶体絶命

一方その頃、エロモ・スターに向かったルーク・スカイウォーター率いる攻撃中隊は強大なエロモ・スターの抵抗に苦戦を強いられていた。
敵の対空砲火を掻い潜って直径約2mの小さな排熱口にプロトン魚雷を撃ち込む作戦は困難を極め、ルークが持っているプロトン魚雷が残された最後の一発となっていた。
刻々と制限時間が迫るなか絶対に的を外すわけにはいかないルークは"pHメーター"という自動照準装置の校正作業を念入りに行っていた。

とその時だった・・・

「ル・・・-・・ク・・・」

「ルークよ」

ルークの内なる声が聞こえた。それは正しく師匠マスターセノービの声だった。

「ルークよ。バクテリアを使え」

「見えてる物が全てではない。あらゆる物にバクテリアは満ちそして様々な働きをしておる」

「バクテリアを信じるのじゃ!」

その声を聞いたルークは持っていたpHメーターと校正液を静かに横へ置き、目を閉じバクテリアに集中した。そして静かにトリガーを引いたのであった。

エロモ・スター破壊


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2020年3月31日火曜日

AW EP-IV 見えざる偉大なもの (前編)

 遠い昔、はるかかなたの銀河系で・・・ 
つい最近、手を伸ばせば届く小さな水槽で・・・
AQUA WARS episode4 見えざる偉大なもの
時は動乱のさなか。凶悪な帝国の支配から自由を取り戻すための戦いは激化の一途をたどっていた。しかしその戦闘の合間に反乱同盟軍のスパイは帝国軍が建造している究極兵器の設計図を盗み出すことに成功。
それは”エロモ・スター”と呼ばれアピストを一瞬で滅ぼすパワーを持つアクア要塞基地だった。レイラ姫は敵の追撃をかわしながら奪った設計図を手に秘密基地へと急いだ。アクアの平和を取り戻すために・・・

エロモ・スター攻撃

エロモ・スターの設計図を奪われたことを知った帝国軍は、反乱軍の秘密基地があるヤヴァンを破壊するために完成したばかりのエロモ・スターをハイパースペースへ突入させた。

一方反乱軍は、入手した設計図を基にエロモ・スターを分析した結果、構造上の弱点が判明した。中心部の反応炉へと通じる小さな排熱口にプロトン魚雷を撃ち込むことにより大規模な連鎖反応爆発を引き起こさせるのが可能だと分かったのだ。
反乱軍の存亡がかかった一刻を争う事態にエロモ・スターへの攻撃隊を任されたのは若きヘンダイ(*) ”ルーク・スカイウォーター”であった。ルークは、故郷ミトゥイーンで農場の手伝いをしていたがマスターヘンダイのオビワン・セノービによりその高い素質と潜在能力を見出され、一躍反乱軍の中隊長へと昇格していたのだった。
既にご存知だと思うが念のためヘンダイについて説明しておこう。
ヘンダイとは、アピストグラマの美しさや魅力に陶酔し、家族や周りの人を巧みにたらし込みながら水槽本数を徐々に増やし、現状には決して満足することなく一流の技と多くの経験と拘りを持ってアピスト飼育の更なる高みを目指し全身全霊で傾注する猛者のことである。
Apistogramma cf. flabellicauda
ハイパースペースを抜けて現れたエロモ・スターを迎え撃つために、逆Yウイングに搭乗したルーク率いる攻撃中隊は、プレミアム・ファルコン号を操る賞金稼ぎのハン・ゾロとチューマッカとともにスクランブル発進した。

パタワンからの相談

一方その頃コルタントにあるヘンダイ評議会には、国内外を問わずヘンダイを目指す各地のパタワンから専用コムリンクを通じてアピスト飼育に関する相談や質問が数多く寄せられていた。

相談内容は、種や性別の同定・DVの緩和方法・飼育機材・アピスト写真の撮影・水質について等々多岐にわたる。
水質についての相談では、換水頻度であったり、pHなどの適正数値への調整方法が多い傾向にある。特に欧米のパタワンはpHの値とともにGHの値も気にしているようだ。水道水が硬水のため軟水に調整する作業が必要だからだ。そのためアピストよりもアフリカの湖産ドワーフシクリッドを飼育する人の方が多いようだ。

パタワンからの相談を受けていて毎回気がかりなことがある。それはほとんどのパタワンが濾過バクテリアの存在をあまり意識していない、ということだ。
良い水質を維持するのはバクテリアの役目であり、飼育者はバクテリアの活動を見極めてその活動のサポート役であることを意識して、出しゃばらず余計なことをしないことが重要である。従って換水頻度はその水槽に定着しているバクテリアの状態や数により異なる。

pHメーターって必要?

もう一つ気がかりなのは、水質=pH と誤認識しているパタワンがあまりにも多いと感じることだ。
アピストというのは軟水の低pHの水で飼育する魚と知られているためそれは致し方ない。しかし様々な経験をしてきた多くのヘンダイは酸性側であればpHはあまり関係ないと感じているのではないだろうか。

そもそもpHというのは水素イオン(H+)濃度指数として知られているが、厳密に言えば濃度とは違い水素イオンが自由に活動できる活量の指数という理解し難いものである。またpH値からある程度の傾向は把握できたとしてもその実体である飼育水の溶存成分は明らかにならない曖昧な指数なのだ。
とは言え、短時間で簡単に水質の傾向を把握できるpHメーターは便利なツールであることは間違いない。ただ季節により多少の変化があるとしても同じ水道水を使っていて、正しいバクテリアのサポート役を長い間こなしていればpHメーターを使わずとも多分ヘンダイ自身が推測した値と大差ないはずだ。
ヘンダイの中には飼育水に指を突っ込むことで正確なpH値を計測できる高度な技術を習得したマスターも居ると聞いている。

pH以外に把握すべき要素

図1 生物濾過サイクルを表した略図

餌は飼育者が飼育水に加える代表的な物質であり濾過サイクルのスタート地点である。各バクテリアの数や状況は水槽毎に異なり、投入する餌の量によりそれ以降のバクテリアの活動に影響を与えるため慎重に行う必要がある。
生体の排泄物や残り餌等は多種の好気性バクテリアによってタンパク質→アミノ酸→アンモニアへと分解される。これらのバクテリアは細胞分裂して2倍に増えるのに要する時間、所謂「倍加時間」は20~30分ととても早いのが特徴である。俗に言う水をピカピカにするバクテリアはこれらの仲間である。
アンモニアは酸性に傾いて高温でない飼育水では毒性が弱いアンモニウムへと変化する。アンモニウムを亜硝酸へと酸化(硝化)するのがタウムアーキオータ等のアンモニア酸化細菌である。倍加時間は長く約24時間掛かる。
亜硝酸を比較的無害な硝酸へと酸化(硝化)するのがニトロスピラ属等の亜硝酸酸化細菌である。倍加時間は更に長く約36時間掛かる。
硝化作用の最終産物である硝酸の蓄積は様々なものに悪影響を及ぼすため換水や水草の吸収により排出するが、アピストのような小さな魚を飼育する場合は明確な目的がない限り頻繁に換水で排出する必要はない。
通性嫌気性細菌とは、酸素濃度が低い環境でも生き延びることが出来る従属栄養細菌である。脱窒とは、このバクテリアが酸素がない環境で硝酸(NO3)から酸素の一部(O)を奪い取り、最終的には窒素ガス(N2)として水槽外に排出することをいい、結果として硝酸が減少することになる。しかしその環境は水が淀んでいてはならない、というかなり特殊な環境である。自然界ではこのような作用が行われているが飼育環境でこのようなシステムを作り上げるのはかなり難しいことである。

NH4+ + (3/2)O2  →  NO2- + H2O + 2H+
図の③ではアンモニア酸化菌のタウムアーキオータ(古細菌)がアンモニアを亜硝酸に酸化している。化学式にすると上になりアンモニウム(NH4+)が酸素(O2)と結合して、亜硝酸イオン(NO2-)と水(H2O)と水素イオン(H+)が生成されている。

ここで生成される水素イオン(H+)が多くなればなるほどpHが低くなり、何らかの事情により硝化作用がうまく働かずアンモニウムイオンが残った場合は水酸イオン(OH-)が減らずpHが高いままという関係性がある。
このようにpH値に大きな影響を与えている水素イオンが変動するのは、バクテリアの活動サイクルの中の一部に過ぎない。従ってpH値が水質を見極めるための全てではないのはお判りいただけるだろう。

pHの他に計測すべき値として、魚に有害なアンモニア(NH3またはNH4)、硝化バクテリアにより生成される亜硝酸(NO2)と硝酸(NO3)、それと高濃度になると危険なリン酸塩(PO4)があげられる。更に飼育環境を確認するために水温、総硬度(gH)、炭酸塩硬度(kH)も計測しておきたい。
炭酸塩硬度(kH)はpHの緩衝作用を行いpH値を安定させる役目を果たす。このkHの値を維持するには総硬度(gH)が必要。そしてgHの値を維持するには当然ミネラル(Ca / Mg)が必要になることを知っておくべきだろう。

これらの物質の計測値は水質を管理する上でとても重要であるが、欠点として値を計測する場合にpHと水温以外は試薬を使う必要があるということだ。
ただし全ての水槽の値を頻繁に計測する必要はない。元水は同じはずなので、一定期間(一ヶ月程度)で一週間に一度程度、環境が異なる水槽をサンプルとして数本計測すれば事足りるはずだ。例として、生体の数が多い水槽と少ない水槽とか、大食漢の生体を飼育している水槽とか、水草が繁茂している水槽とか。また季節により水道水の水質が変化するので夏と冬は念入りに計測した方が良いだろう。
そして前回との結果に大きな差があった場合は必ずその原因を考えて記録しておくべきである。例えば、あの日に餌をいつもより多く与えてしまったとか、大量に換水をしたとか、生体を増やしたとか、水温が急激に変化したとか。

ここで注意しなければならないのは、計測された数値にのみ注目するのではなく、その数値とバクテリアの状況を関連付けて理解し予測することが重要だ。
例えば生体の数が増えたので餌の量を増やした翌日に亜硝酸の値が急激に大きくなっていた場合、いつもより多く生成されたアンモニウムに対して亜硝酸酸化細菌の活動が追いついていない、と気付くことができる。

ただし数値が前回から急激に変化したからといって、水質改善の万能薬と呼ばれている換水という応急処置は必ずしも必要なく、時と場合によっては餌を3日程度抜くことによりバクテリアのバランスが整い正常な状態に戻ることもある。
飼育者がバクテリアの活動状況を把握し、直接水質を変化させることは極力避け、あくまでもバクテリアのサポート役に徹すること、そしてそれを記録し経験を積むことが重要だ。

ところで試薬を使った計測はpHメーターを使った計測に比べて面倒で時間が掛かる。いつの日かpHメーターと同様に飼育水に浸せば瞬時に値が計測される機器が発明されるのを願うばかりである。
ついでに肥料の三大要素と呼ばれている窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)やその他の中量・微量要素が簡単に計測できたり、水槽内に存在するバクテリアの種類と数が短時間で分かるようになれば多くのヘンダイやパタワンが歓喜することだろう。

とは言え、値の変化を一定期間記録し続けることにより飼育者の行動による値の変動を予測できるようになるため、これらの値を頻繁に計測する必要性は少なくなるはずだ。
もし機会があればディスカス等餌を沢山食べるシクリッドの飼育に是非チャレンジしてほしい。バクテリアの数は与える餌の量に比例する。バクテリアの数が多ければ多いほど濾過バクテリアの仕事量が大きくなるため、計測値の変化も大きくバクテリアの活動状況を把握しやすい、という利点がある。
Apistogramma cf. flabellicauda

バクテリアはどこからやってくるのか

生物濾過に不可欠な濾過バクテリアはどこからやってくるのか。水槽内に入れる砂やソイル・産卵床・流木・水草などあらゆる物に付着しています。また魚の鰓や腸内や排泄物だったり、水や空気中からもやってくる。もちろんブクブクやスポンジフィルターに送られているエアからバクテリアは水槽内に常に供給されているはずである。ただし必要な濾過バクテリアのみが水槽内に混入するのではなく数え切れないほどの様々なバクテリアを含む微生物が混入する。その中にはカビなどの菌類やウイルスなども含まれるいる。また空気中には休眠状態の濾過バクテリア(シスト)が多く存在している。
そして飼育水に混入したこれらの微生物のうち水中で活動できる者が生き残る。その後は生存をかけた各バクテリアの戦いが続き、最終的には濾過バクテリアが勝利しそれぞれのコロニーを形成していく流れになるだろう。

ただし先住の濾過バクテリアが既にコロニーを形成している水槽では新たに混入してきたバクテリアは多分歯が立たないだろう。コロニーを形成したバクテリアはバイオフィルムという強力な武器を備えているからだ。

アピスト飼育を真剣に始めると同じタイミングで複数の水槽を新設することは少なくないはずだ。しかし全く同じ機材や環境で新設したのに濾過バクテリアの立ち上がりが全然違う、というのはよくある話だ。
その理由は、全くの新水であれば力のある先住バクテリアが居ない環境なので誰が生存競争の勝者になるか分かない状況だからだ。最終的には正しい濾過バクテリアが定着していくはずだが、立ち上がるまでの時間は水槽毎に異なる。

水槽を新設やリセットする際に元の飼育水を溜めておいて新たな環境に移す作業を行うことは多いと思う。水質の変化を極力抑える目的でこの作業をするのなら問題はないが、もしこの作業を濾過バクテリアの移行を目的としているならそれは間違いである。何故なら上で書いたように飼育水には有用なバクテリアはほとんど含まれておらず、微生物の死骸や戦いに敗れたバクテリアばかりのはずだからだ。
もし新たな環境に濾過バクテリアを移行するのであれば、スポンジなどの濾材自体や古いソイルを新たな水槽に移動し濾過バクテリアのコピーを作るのが手っ取り早いし得策だ。

こなれた水

水質についてパタワンとやり取りをしていると『こなれた水』とか『安定した水』というキーワードが時折出てくる。果たしてこの『こなれた水』とはどのような水を差しているのか。
図2 安定した濾過バクテリア
『こなれた水』とは、生物濾過サイクルを構成する各バクテリアが充分に増殖し、それぞれの役割りがバランス良く結びついている状態の水を意味すると考える。不意な出来事が起きても動じることなく対処できる強い水とも言えるだろう。
図3 不安定なバクテリア
逆にまだ熟成してなく不安定な水は、各バクテリアが充分に増殖してないので、有害な物質を全て分解しきれずバクテリアのバランスが悪く濾過サイクルが崩壊しやすい状態の水をいう。
まだ未熟な水をこなれた水へとステップアップさせるためには、各バクテリアのバランスを崩さず倍加時間を考慮しながら生体の数と餌の量を徐々に増やしていくしかない。
ここまでがアピストに限らず淡水で生体を飼育する際に知っておきべき基本的な情報だ。
難しい化学式やバクテリアの名前・生成される物質などは憶える必要はないが以下のことは抑えておいてほしい。
  • いくつかのバクテリアのグループがそれぞれの役割りを担い水質を維持している
  • pHが水質の全てではない
  • バクテリアの種類やコンディションによりそれぞれの仕事量が異なるので飼育者はそれを見極めサポートする必要がある
  • 生体数や餌の量、飼育者の行動による水の変化のパターンが把握できたら頻繁に水質を計測する必要はない

AW EP-IV 見えざる偉大なもの (後編)に続く・・・

この記事はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり実在のものとは関係ありません。
そしてこれを書いた人のキャラもフィクションです。
掲載内容については、私の知識や経験を基に書いているため必ずしも正しいとは限りません。


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